未変性二次元電気泳動を用いたタンパク質相互作用の解析 
愛媛大学理学部 真鍋 敬

 「プロテオーム」という用語は、現在いろいろなニュアンスで使用されているので、演者はこれを以下のように定義したい。
 「ゲノムから個々のタンパク質への情報の流れを明らかにするとともに、発現しているすべてのタンパク質の構造と生理的機能を明らかにすることにより、生体機能の再構成をめざす研究の方向。」
 このように定義すると、ある細胞あるいは生体系において発現しているすべてのタンパク質が研究対象となるわけであるから、現在タンパク質の分析において最も高い分離能をもつ二次元ゲル電気泳動が重要な研究方法となるのは当然である。スイス生命情報研究所(Swiss Institute of Bioinformatics,SIB)の二次元電気泳動マップのインターネットサイト(SWISS-2DPAGEデータベース、http://www.expasy.ch/cgi-bin/map1)には、23種26枚の二次元電気泳動マップが掲載されている(2000年4月1日現在)。これらのマップおよびデータベースは、変性条件の二次元電気泳動によって、タンパク質の立体構造を壊した状態で分離したものであることを考えれば、「ポリペプチドマップ」あるいは「ポリペプチドデータベース」と呼ぶべきものである。しかし、変性条件の二次元ゲル電気泳動では、実際に機能しているタンパク質についての情報を直接得ることは難しいのであるから、プロテオーム研究の方法として不充分であることは明らかである。
 演者らは未変性条件の二次元ゲル電気泳動を用いてタンパク質を分離するとともに、得られた「タンパク質マップ」上の多数のタンパク質を「ポリペプチドマップ」上の多数のポリペプチドと同時に対応づける方法を検討してきた。ヒト血漿タンパク質を例として、この方法の現状を報告する。